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『ソフトウェアビジネス新市場 2011年版』まとまる(2011/7/14発表 第11064号)

東日本大震災の影響で認識高まるクラウドサービスなど法人向けソフトウェア主要65品目の国内市場を調査

2015年度予測(10年度比)
バックアップ・リカバリーツール:621億円(226.6%)データセンター事業者需要が多様に拡大
SCP(サプライチェーンプランニング):143億円(173.3%)東日本大震災を契機に導入増
クラウド管理ツール:105億円(460.5%)プライベートクラウド環境管理需要が拡大

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、今年3月から5月にかけて、法人向け主要ソフトウェア65品目の国内販売数量、販売金額、主要メーカーシェアなど定量データを分析し、今後の市場を展望した。その結果を報告書「ソフトウェアビジネス新市場 2011年版」にまとめた。

 調査対象に選んだ65品目は、バックオフィス系11品目、フロントオフィス系5品、エンジニアリング系4品目、情報分析系4品目、コラボレーション系14品目、ミドルウェア7品目、データベース3品目、開発ツール3品目、運用・管理ツール10品目、基本ソフト系4品目である。

 各品目の市場動向は、「パッケージ」、「クラウド」ならびに「アプライアンス」の3つの流通形態別に調査し、とりわけSaaSおよびPaaS/IaaSを主体とする「クラウド」については、システムを所有型から利用型へ移行するIT戦略の重要テーマとして重点的に調査・分析した。

 パッケージソフトウェアの役割は、情報化社会の進化とともに企業の情報システムを構築する技術として、ますます重要性を高めている。

 自社のコアコンピタンスをソフトウェアへ組み込み競争優位性を高める企業も、コア業務を峻別して差別化とコスト最適化の両立を図っている。またERP(経営資源統合管理計画)などの分野では、海外拠点を含めた全体最適化の実現や世界標準に沿ったシステム技術の標準化を目指して世界的に著名なパッケージソフトウェアの採用を進めている。

 一方、この業界の重要な動向としては、クラウドコンピューティングがソフトウェアの導入形態を所有型から利用型へ導き、カスタマイズを抑制してソフトウェアの“既製”化を一層促進している。

 日本のソフトウェア産業は、生産性をいかに高めるかが課題であり、クラウドコンピューティング戦略がこのような事業改革の重要な契機となる、と考える。

注目される品目分野
 今年3月11日の東日本大震災の被災経験から、コンピュータ被災による事業停止を避け、いかにして自社事業を継続するかの課題に直面して事業継続への意識が高揚することとなった。以下にあげるソフトウェアはいずれもこうした環境から注目されると考える。
バックアップ・リカバリーツール(ストレージ管理ツール)
11年度見込314.7億円(10年度比114.9%) 15年度予測621億円(10年度比226.6%)

 バックアップ・リカバリーツールはサーバの出荷に左右される市場であり、10年はサーバ市場の復調とともに274億円に拡大した。クラウドサービスはこれまでも大規模ユーザー向け災害復旧(DR)対策サービスとして堅調に拡大してきた。近年中小企業向けサービスメニューも提供されるようになり、新たなユーザー獲得に繋がっている。今後はクラウドビジネスを推し進めるデータセンター事業者からの需要を主体として、市場の拡大が見込まれる。
 年々企業のバックアップデータ容量が増大しており、バックアップの時間短縮は切実な問題となっている。管理面での負荷からオンラインバックアップサービスを利用する可能性が高まるとして、クラウドサービスの一環でバックアップサービスを提供する事業者が増加している。バックアップソフトウェア製品のベンダーは、データセンター事業者への導入に適したライセンス契約による販売を予定するなど、サービス対応が進んでいる。
 東日本大震災によって直接的被害を受けなかった企業も、バックアップが事業継続のために最も重要な対策のひとつであるとの認識が広まっている。バックアップデータを復旧する際にかかる時間の短縮や実行フローの明確化、確認あるいはデータ保全の確実性を検証することが最も重要であり、障害発生時に初めてリカバリーの不確実性が露見することは避けなくてはならない。震災を受けてバックアップ・リカバリー業務の見直しを始めたユーザーがテープ主体のバックアップからディスクへの移行を一層進めるほか、データの規模や中身によりオンラインバックアップサービスの利用も加速するなど、バックアップ運用形態の多様化が予測される。
 これまでシステム、拠点、部門単位といった部分最適に基づき導入してきたストレージを統合しより効率的なシステム運用を目指す動きが今後活発化することが見込まれる。加えてクラウド環境の利用によりデータ保有がいっそう複雑化すると見込まれ、ストレージ管理ツールの導入がますます進むと考えられる。
クラウド管理ツール
11年度見込35億円(10年度比153.5%) 15年度予測105億円(10年度比460.5%)

 この市場は09年から立ち上がり、まずクラウド環境を効率的に管理するために用いられるデータセンター運用の自動化(ランブックオートメーション)の需要が拡大し、続いてリソース管理やサービス管理(主に課金管理)といったクラウド環境を展開する企業・事業者向け管理ツールが出始めている。09年に日本IBMや日本ヒューレット・パッカードがクラウド環境を早期に構築できる製品を展開しはじめたことがこの市場成長の一因となった。
 富士通は国産ベンダーとして10年6月よりクラウド向け管理ツールを提供し大規模ユーザーで実績を挙げた。今年も企業におけるプライベートクラウド構築需要を取り込んでいる。日本IBMでは需要の多い製品の価格低廉化を図ってパッケージ販売を伸ばしている。
 このソフトウェアは、クラウド環境構築に留まらず、仮想化環境上に構築したシステムの管理にも幅広い需要を取り込んで成長していくと見られる。最も有望視されるのはプライベートクラウド環境の管理ツール需要である。今後サービス管理分野へと需要が波及することで拡大が期待される。
SCP(サプライチェーンプランニング)
11年度見込99.5億円(10年度比120.6%) 15年度予測143億円(10年度比173.3%)

定義:SCP(Supply Chain Planning)とは、設計、調達、製造、販売を一貫して最適化すること目的に、販売実績など過去のデータから需要を予測して、外注・下請け業者から自社、顧客を結ぶサプライチェーン全体の生産・流通・在庫管理方針を決定するシステムである。
 10年度に入って好調な輸出により製造業の業績が回復し、大手製造業を主な需要先とするこの市場は持ち直した。東日本大震災の発生により、自動車やその他機械製造業を中心にサプライチェーン管理を見直す動きが急拡大している。今後復興への本格的移行とともに、事業継続の観点をより強力に意識したサプライチェーン管理システムの再構築が進み、11年度は大幅な市場拡大が見込まれる。国内にサプライチェーンの多くを依存する企業では、海外サプライヤーなどへの拡張が進むであろう。今後は、SAPジャパン、日本オラクルなど外資系ベンダーに日立東日本ソリューションズ、富士通など大手国産ベンダーを加えて競争が激化すると予測される。
 この分野のクラウドサービスは、自社専用システムを開発・運用する資金力がない中小企業を主な対象とした、限られたサービスの提供に留まっている。事業継続の観点から、SCPシステムの運用を複数拠点へ分散させるためにクラウドサービスを検討する動きが活発化すると見られる。ただしERPととともに企業の基幹業務を支えるSCPについては、高い可用性や信頼性が求められ、プライベートクラウドの利用が主流となると見られる。
 在庫を極限まで圧縮することは、労務費などコスト面で不利なわが国の製造業が世界市場で価格競争力を維持する極めて重要な取組みである。また自製部品による製造は、技術的差別化要素となるが、反面部品調達や生産継続面でリスクを高める。SCPは、このような差別化要素の強化と事業継続の両立を図る目的で、今後導入意欲が高まると予測される。
内容の詳細につきましては『ソフトウェアビジネス新市場 2011年版』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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