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『2011年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望』まとまる(2011/4/26発表 第11038号)
光学機能、ハイバリア機能、電気的機能、耐熱性、離型性、意匠性などの特性を付加した
機能性高分子フィルム市場の調査を実施
- ■2011年見込
- ■FPD関連機能性高分子フィルム市場(世界)1兆8,975億円(前年比8.2%増)
■輝度向上フィルム市場(世界)2,550億円(前年比14.9%増)
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、光学機能、ハイバリア機能、電気的機能、耐熱性、離型性、意匠性などプラスチックフィルム単体では発現できない高付加価値な特性を付加した機能性高分子フィルム市場を調査分析した。その結果を報告書「2011年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望」にまとめた。
この報告書では、機能性高分子フィルムとして57品目を取り上げ、その応用領域を、FPD関連、半導体・実装関連、電池関連、電気・自動車・建材、バリア包材、包材・他の6分野に分類し、品目別に市場規模や用途展開状況、材料構成、海外動向、研究開発状況などを分析し、機能性高分子フィルム市場の今後の方向性を明確にした。調査は、対象品目ごとの事情を勘案して世界市場あるいは国内市場を対象にした。
機能性高分子フィルムとは、ベース材となるプラスチックフィルムにコーティングや蒸着等の表面処理やラミネート等の二次加工、またはベースフィルム原料自体の高機能化やハイブリッド化などにより、何らかの機能を付与したフィルムであり、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、包装等、非常に多岐な分野で応用されている。中国を中心とした新興国の旺盛な需要を背景に拡大するディスプレイ分野や急成長している電池関連市場など、多くの産業分野で機能性高分子フィルムの果たす役割はこれまで以上に重要となっている。
- ■注目市場
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品目 対象市場 2010年 2011年見込 前年比 輝度向上フィルム 世界 2,220億円 2,550億円 114.9% 転写フィルム 世界 555億円 575億円 103.6% 透明蒸着フィルム 国内+輸出 243億円 261億円 107.4% バイオ・生分解性フィルム 国内 50億円 62億円 124.0% - ■輝度向上フィルム
プリズムシートおよび反射偏光板(DBEF)を対象とする。プリズムシートとは、PETフィルム上に光硬化系樹脂を三角形に形成し、光効率を向上させたバックライトユニットに組み込むフィルムである。2010年の市場は、1億5,700万m2、2,220億円となった。LCDパネル市場の拡大により、面積ベースで市場が拡大している。金額ベースの伸びは、単価下落が激しく面積ベースのそれを下回る。反射偏光板(DBEF)では、バックライト光源のLED化に伴い、輝度向上要請が強まり、LED−TVなどでの採用が拡大している。TV以外にも、省電力ニーズの強いスマートフォン向けパネルなどで需要が拡大している。 - ■転写フィルム
成形同時加飾転写システム(フィルムインモールド成形)に使用される加飾付与フィルムを対象とした。成形同時加飾転写システムは、ベースフィルムに印刷または蒸着の図柄を施し、金型内に挿入し射出成形の熱と圧力により図柄がベースフィルムより剥がれ、成形品に金型内で転写する加飾工法である。
不況の影響から一時的な需要の落ち込みをみせたものの、2010年の市場は回復に向かい、4,950万m2、555億円となった。市場の牽引役となってきた携帯電話に加え、ノートPCでも採用率が上昇している。また、ノートPC向けでは、携帯電話に比べ個体あたりのサイズメリットがある点も、市場拡大のプラス要素となっている。塗装需要を大幅に代替していく可能性は低いが、電気・電子機器用途では、多機能化に加えて、外観のデザイン性が商品開発において重視される傾向にある。また、成形物に加飾フィルム自体を貼り付けるフィルムインサート成形に比べ、コスト面では優位にある。これらの要因から、今後も堅調に推移していくと予測される。 - ■透明蒸着フィルム
無機物を真空中で蒸発させ、ベースフィルム上に薄膜を形成したもので、透明な蒸着層によりガスバリア性、水蒸気バリア性を発揮する透明バリアフィルムで、保香性にも優れる。このフィルムは、バリア性の高さ、透明性(内容物の確認、製造時の異物混入や噛み込みシールチェック、在庫管理や通関検査などが容易にできる)、電子レンジや金属探知機の使用が可能なことなどが採用ポイントとなっている。
2010年の市場は1万6,700トン、243億円となった。主力用途である菓子関連市場の成熟化、競合フィルムの存在などから伸びは鈍化している。他方、輸出は好調で、レトルト用が欧州、北米を中心に需要拡大しており、アジア圏での需要増加も期待される。非食品用途は、太陽電池バックシート用が拡大しているほか、経腸栄養剤など医療関連用途でも需要が拡大している。食品用途の成長は低いものの、非食品用途、輸出などの需要拡大により、今後も年率5%前後の成長が予測される。 - ■バイオ・生分解性フィルム
バイオマスプラスチック及び生分解性プラスチックフィルム・シートを対象とする。バイオマスプラスチックとは、植物を原料とした樹脂で、サスティナブルケミストリーとして期待されている。PLA(ポリ乳酸)が代表的であるが、近年はバイオPEやバイオPET、バイオPCなど、既存の石油由来樹脂の原料の一部をバイオマス由来とした樹脂が注目されている。一方、生分解性プラスチックは、「生分解」機能を訴求した樹脂の総称であり、植物・石油両原料から製造可能である。以前は、生分解性を訴求した樹脂が多かったが、近年は地球温暖化や脱石油のトレンドから、バイオ由来(植物由来)がトレンドとなっている。ただし、地域差があり、欧州では堆肥化可能な生分解性樹脂のニーズが高いものの、日本ではCO2削減や環境対応をPRする目的で採用されるケースが多い。
バイオ・生分解性フィルム市場は、2009年に景気悪化の影響を受け若干の需要減があったものの、2010年には回復している。PLAは、シートが大半を占め重量ベースでは最も多く、透明容器として使われる。大手スーパーがPLAを含めたバイオプラスチックの採用に積極的な姿勢を見せている。一方、生分解性フィルムは、農業用マルチフィルム需要がメインである。2009年は景気悪化から減少し、2010年は再び拡大しているものの、今後国内では大幅な需要増は難しいとみられる。 - ■調査結果の概要
- 電気・電子、自動車等、最終製品の軽薄短小化、高性能化に伴い、フィルム資材に要求される機能は、年々多機能化、高機能化の度合いが強まりつつある。また、市場拡大や応用用途の多様化とともに参入企業間の競争が激化しており、従来日系企業の得意としてきた分野でも、韓国、台湾、中国などの海外企業が台頭してきている。海外企業はコスト競争力を武器に市場での存在感を強めており、日系企業は従来以上に技術力での差別化を図る必要に迫られている。
- ■機能性高分子フィルム主要分野世界市場(電池関連のうち燃料電池用電解質膜は国内市場のみ)
分野 2010年 2011年見込 前年比 FPD関連(16品目) 1兆7,543億円 1兆8,975億円 108.2% 半導体・実装関連(7品目) 1,913億円 1,980億円 103.5% 電池関連(6品目) 3,290億円 4,114億円 125.0% - ■FPD関連
基本的にLCD(面積ベース)に連動した市場となっている。バックライトユニット関連では、高価格なLEDの個数を減らしコストダウンするために輝度向上フィルムの需要が増加している。3Dテレビ向けでは、偏光フィルタなどでの需要増も見受けられるが、メガネ用偏光フィルムの需要も増加している。タッチパネル関連では、透明導電性フィルムとOCAテープ、耐指紋性フィルムなどの需要が拡大している。今後はプラスチックフィルム基板などの次世代フィルムの拡大が見込まれる。
内容の詳細につきましては『2011年版 機能性高分子フィルムの現状と将来展望』をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)