プレスリリースPress Releases
『モバイルPCとキーデバイスの実態調査及び市場展望』まとまる(2011/6/10発表 第11052号)
スレートPC(タブレットPC)を軸にモバイル(携帯型)PCの世界市場を調査
激化する競争市場の棲み分けを分析
- ■2020年予測
- ■スレートPC:1億5,000万台(10年比882.4%) 電子書籍専用端末、PDAなどを統合して拡大
■SSD:2億1,770万個(10年比867.3%) 8,668億円(10年比483.7%)
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、11年3月〜4月下旬に、拡大顕著な世界のモバイルPC市場を形状別に調査した。その結果を調査報告書「モバイルPCとキーデバイスの実態調査及び市場展望」にまとめた。
この調査ではモバイルPCをノートブックPC、ミニノートブックPC、UMPC/ネットブックPC、コンバーチブルPC、スレートPCに5分類しそれぞれのPCがどう変化するのか、その現状と将来を調査し、更にその構成部品7分野31品目の市場動向を分析した。またメーカー分析では、アップル、ソニー、パナソニック、ヒューレットパッカード、デルなど10社を取り上げた。
これら5タイプのモバイルPCはホームエンターテインメントに使用するハイエンド機から機能限定・低価格のエントリー機種まで幅広く揃っている。市場はこれまで欧米を中心に拡大し、近年中国やインド、ブラジルといった新興国において拡大している。使い易さや手軽さを背景に今後も堅調な拡大が見込まれる。Appleが10年に発表したスマートフォンと既存のモバイルPCの中間に位置づけられるスレートPC「iPad」が世界中から注目され、初年度から好調な出だしとなった。スレートPC(タブレットPC)はその他のモバイルPCともスマートフォンともあまり競合せず独自の市場を築いている。
スマートフォンは通話機能、ノートブックPC、ミニノートブックPCはキー入力というスレートPCにはない入力機能を持つため共存しながら市場を拡大していくと推測する。そしてスレートPCはPDA、電子書籍専用端末、ゲーム機などの専用型モバイル機器の需要を統合しつつ吸収して拡大していくと推測される。
スレートPCには既存のモバイルPCにほとんど搭載されなかったタッチパネルや角速度センサなどの新規部材が搭載されているため、今後この部材市場が長期的に拡大していくと予測される。
ただ11年3月11日の東日本大震災の影響を受けて一部の部材が調達困難になっており、高成長に大きく影響を及ぼすと予測される。
- ■調査結果の概要
-
■モバイルPC市場(15年、20年は予測)単位:万台
2010年 2015年 2020年 スレートPC 1,700 12,500 15,000 ノートブックPC 14,040 26,130 29,500 ミニノートPC 3,090 8,770 10,000 UMPC/ネットブックPC 3,200 1,400 1,000 コンバーチブルPC 160 150 150 合計 22,190 48,950 55,650
スレートPCはAppleの「iPad」が世界的なヒットとなり、モバイルPCの2台目マシンとして欧米を中心に初年度から市場を拡大した。11年は各社が相次いでスレートPCを投入しているが、Appleの高いシェアが当面は続くと推測される。
11年のモバイルPC市場は前年比5.1%増の2億1,540万台に留まると予測される。需要は高止まりしているが、東日本大震災による部材調達の困難や1−3月のチップセットトラブルの発生により高い成長は実現困難と推測される。一方スレートPCは、部材調達の困難はあるものの、立ち上がり間もない市場であることから、高成長を維持すると推測される。
モバイルPCの生産は日本、中国、その他アジアに集約されている。殆どOEM/ODM/EMS生産に集約しつつあり、製造拠点は上海や昆山(江蘇省)に集中している。ただ中国沿岸部の人件費高騰から、人件費の安い内陸部にシフトしている。今後、重慶は一大生産拠点となる見通しでPCの製品メーカーのみならず部材メーカーもここに生産拠点を設立している。
その他には、台湾、マレーシア、シンガポール、インド、ベトナムで生産を行っている。一部のメーカーは中国の人件費高騰やチャイナリスクを考慮して、東南アジアでの生産を拡大させる計画を打ち出している。今後この動きは各社で加速すると推測され、その他アジアの生産ウェイトが高まると予測する。
モバイルPC市場は、欧米を最需要地域として来たが、近年は中国やアジア、中南米の新興国向けの拡大傾向が顕著となっている。日本、欧州、米国では既に人口に対するモバイルPCの浸透率が高く、今後は買い替え需要中心の市場となる。一方、中国を中心とする新興国ではモバイルPCの浸透率が20%未満で今後も高水準で増加し続けると推測される。特に中国市場の拡大が顕著で、大画面ホームユースノートブックPCとして15インチクラス及び低価格CPUを搭載したローエンドのノートブックPC及びミニノートブックPC市場が急成長している。 -
1. スレートPC
スレートPCは、インターネット閲覧を主眼としたネットブックPCからの買い替えと、PDA、電子書籍専用端末、ポータブルメディアプレーヤを1台に集約するPCとして市場を取り込むため、モバイルPCとは殆ど競合せず拡大していくと推測される。また入力がタッチパネルであるスマートフォンとも競合せず、独自の市場を形成していくと推測される。機能は重複するが、通話と日常メールはスマートフォン、スレートPCの主用途はインターネットの閲覧、動画や電子書籍閲覧と区切りが出来て相互に競合せずに拡大していくと推測される。スレートPCの購入層にはスマートフォンユーザーが多く、ディスプレイが小さいスマートフォンの補完ツールとして購入するユーザーが多い。またスレートPCでの通話はサイズが大きいためスマートフォン/フィーチャーフォンほど手軽に出来ず棲み分けが出来る。スレートPCの売れ筋サイズは10インチ、5インチクラスのニーズがスマートフォンに集中する傾向が強い。
ノートブックPCやミニノートブックPCと比較すると搭載されている機能も最適化されており通常のPCの起動よりも早く、入力もキーボードより簡易なタッチパネルであるため、ホームユースのライトユーザーに適しているということも利点であり、ネットショッピングを主用途としているユーザー向けにも拡大していくと推測される。スレートPCは所有すれば便利な機器であり今後インターネットサービスの充実や利便性の追及、低価格化の実現により、さらに市場は拡大していくと推測される。
また、ビジネス用途でもスレートPCは文書の閲覧、メールチェックの「見る」・「閲覧する」の点にあり入力作業はメインではない。
スレートPCが競合する機器は、ネットブックPCと、ポータブルメディアプレーヤ、電子書籍専用端末、PDAが挙げられる。比較的機能を特化したデバイスが多く、スレートPCがこれらの機能を統合する機器になる可能性が高いことから、これらの需要を取り込んで市場を形成すると推測される。
電子書籍専用端末は、スレートPCが同じ機能を果たすことから需要を取り込まれる。機能を特化して軽量化と電池の長寿命化をさらに高めればニーズを保持することも可能と推測される。
内容の詳細につきましては『モバイルPCとキーデバイスの実態調査及び市場展望』をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)