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『2012 SaaS・ICT基盤市場総調査(下巻:ICT基盤市場編)』まとまる(2012/3/19発表 第12028号)
仮想化・クラウドコンピューティング環境に進化する国内ICT基盤市場を調査
- ■2015年度市場予測
- ■クラウド基盤ソリューション市場:10年度比 2.2倍 6,650億円
■クラウド基盤サービス市場:10年度比 2.7倍 3,022億円
■ネットワークサービス市場:10年度比 9.4%増 1兆4,911億円
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町2−5 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、2011年11月から2012年1月にかけて、クラウドコンピューティングのICT基盤市場を調査してこの市場の動向を把握し、今後の市場予測と展望を行った。
この調査では、クラウドコンピューティングのICT基盤市場のうち、クラウド基盤ソリューション(2品目)、クラウド基盤サービス(2品目)、基盤SaaS(8品目)、関連製品から、ハードウェア(10品目)・ソフトウェア(5品目)、ネットワークサービス(4品目)を対象とし、その市場規模推移や占有率、各市場とその環境を分析して動向を把握し、今後の予測・展望を行った。
その結果を報告書「2012 SaaS・ICT基盤市場総調査(下巻:ICT基盤市場編)」にまとめた。
なお、ネットワーク経由のSaaS(Software as a Service)の国内サービス市場は、1月27日のプレスリリース(『2012 SaaS・ICT基盤市場総調査(上巻:SaaS市場編)』まとまる)で10年度1,786億円、15年度予測は10年度比66%増の2,958億円とその市場を発表している。
産業が空洞化し国内市場が頭打ちのなか、今後の日本のICT産業はクラウドコンピューティングによって新規需要を創造し、世界市場にビジネス展開することが重要となる。これまで遅れていた中小企業も費用対効果を考慮しつつクラウドコンピューティング導入を進めて企業競争力を高めて行く。
東日本大震災は、企業及びキャリア/サービスプロバイダ、データセンタ事業者のICTインフラ構築構想に大きな変化をもたらした。物理的な距離による遅延や外部へのデータ配置によるセキュリティ問題などを懸念しICTインフラの外部委託を敬遠していた企業も、データの損失リスクやシステムダウンリスクに対するBCP(事業継続計画)対策として、クラウドコンピューティングに対するニーズを重視している。
- ■調査結果の概要
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■仮想化・クラウド環境向けICT基盤市場
市場は、プロダクトベンダ、SIer、通信事業者、データセンタ事業者、クラウド事業者によって構成される。2010年度 2011年度見込 2015年度予測 10年度比 クラウド基盤ソリューション 3,023億円 3,650億円 6,650億円 220.0% クラウド基盤サービス 1,102億円 1,480億円 3,022億円 274.2% 基盤SaaS 275億円 318億円 471億円 171.3% 関連製品 1,592億円 2,074億円 4,447億円 279.3% (重複分) 1,429億円 1,723億円 2,997億円 209.7% 合計 4,563億円 5,799億円 1兆1,593億円 254.1% ネットワークサービス 1兆3,633億円 1兆3,717億円 1兆4,911億円 109.4%
15年度のクラウド基盤サービス市場は、企業がICT基盤を“所有から利用”へ着実に移行するため、自社所有型システムを中心に対応するクラウド基盤ソリューション市場を上回る伸長(10年度比174%増)になると予測する。セキュリティ管理やコンテンツ配信などの基盤SaaS市場は、クラウド基盤のソリューションやサービス、汎用SaaS市場の拡大に伴い、付加価値を高める周辺サービスとして堅調に拡大すると予測する。特に画像や動画通信の増大やPC、モバイル端末、TVなど利用端末が多様化し、スマートフォンも登場して通信量の増加と大量アクセスに対応するコンテンツ配信プラットフォームに対するニーズが更にWeb運営事業者に高まると予測する。
国内のICT環境は仮想化・クラウド化し、今後はサーバを中心とした仮想化からストレージやネットワークの仮想化構築も進む。信頼性を最重要視する大企業など一部の企業では自社所有型システムの構築が主体となるものの、一般企業では“所有から利用”への流れが加速してPaaS(Platform as a Service)/IaaS(Infrastructure as a Service)やSaaSなどの利用型パブリッククラウド市場が一層拡大すると予測する。 - ■注目される市場
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■クラウド基盤ソリューション(仮想化クラウド環境、シンクライアント環境)
10年度 3,023億円 15年度予測 6,650億円(10年度比220.0%)
この市場は、仮想化機構を利用して複数の仮想マシンを1台の物理サーバ上で稼動させる「仮想化環境」、複数の仮想化環境のリソースをプール化・一元管理化する「統合環境」、システム運用を標準化・自動化した「クラウド環境」へと進化する。そして仮想化クラウド環境市場は10年度2,543億円と、国内のOSやミドルウエアなどのプラットフォームソリューション全体市場の9%規模から、15年度には同21.5%の5,700億円に拡大すると予測する。
現状では一部の先進的企業で複数の仮想化システムを統合して自動化する例も見られるが、大部分の企業は情報系サーバやファイルサーバなど限定したクラウドシステムを個別に手動で運用して統合環境を構築する段階に留まっている。ただ大震災後はクラウド環境に対する期待が高まって、今後は一気にクラウド環境構築を検討する企業が増加すると予測する。
シンクライアント環境のシステム設計・構築から運用・保守までの市場は10年度480億円であったが、15年度では950億円に拡大すると予測する。企業のセキュリティ目的からニーズが年々拡大し続けており、この分野も大震災後のBCP意識が追い風となっている。またスマートデバイスの普及や、クラウドコンピューティングの認知度が向上して、外出先や自宅などからオフィスPCにリモートアクセスするニーズも高まりが見られる。 -
■クラウド基盤サービス(データセンタ・PaaS/IaaS、DaaS)
10年度 1,102億円 15年度予測 3,022億円(10年度比274.2%)
この市場は、仮想化技術によって集められたIT資源をネットワーク経由で利用するオンデマンド型のサービスであるPaaS/IaaS、DaaSを対象としている。PaaSとIaaS市場は10年度の120億円から、15年度には5.2倍の620億円に拡大すると予測する。従来型サービスに代わり、初期コストを抑えてIT資源を利用できるメリットからユーザー規模が急増しているほか、社内向け業務システムとして利用する企業も増加している。複数ユーザー向け共有型サービスは認知度が向上し、サービス信頼性も向上しており引き続き高い成長を予測する。
DaaS(Desktop as a Service)はデスクトップPCの運用・管理体制を一新する必要があり長期利用コストが自社所有型より高くなるため伸び悩んでいる。しかしクラウドサービスに対する注目度が高まり、DaaS提供事業者が増加してサービスの認知度が向上し、大手通信事業者による大規模自社導入や数千〜万単位の大規模案件が見られたため11年度は前年度比12.5倍、30億円と大幅に市場が拡大したと見込む。
内容の詳細につきましては『2012 SaaS・ICT基盤市場総調査(下巻:ICT基盤市場編)』をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)