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『2013年 微粉体市場の現状と将来展望』まとまる(2013/11/18発表 第13084号)
最も高成長が予測されるカーボンナノチューブなど高機能微粉体市場を調査
- ■2017年予測と12年比
- ■はんだ粉:1,725億円 34.5%増 需要拡大の著しいスマホ・タブレットで採用増
■貴金属粉末:586億円 38.2%増 HDDの磁気記録方式の移行で需要増を期待
■ジルコニア:434億円 33.5%増 自動車用排出ガス浄化触媒として高成長
■カーボンナノチューブ(CNT):43億円 59.3%増 高機能に加え、導電フィルムなど新用途も期待
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、13年7月から8月にかけて微粉体市場を調査した。
その結果を報告書「2013年 微粉体市場の現状と将来展望」にまとめた。
この調査では、汎用無機、金属、金属酸化物、セラミックス、ポリマー、ナノマテリアルなど6分野の微粉体について、市場規模、参入メーカーおよびメーカーシェア、サイズや素材、製造工程などの製品/技術動向などを把握して、広く微粉体市場の現状と今後の方向性を明らかにした。
微粉体は混合によって容易に各種素材の高機能化に寄与し、自動車やエレクトロニクス、産業機器、化粧品、ライフサイエンスなど応用用途が幅広いマテリアルである。特に近年、材料やデバイスなどの高機能化ニーズが高く、微粉体が果たす役割は年々重要になっている。高機能化・高付加価値化により海外メーカーと差別化を進める日系メーカーにとってなくてはならないものである。
- ■注目される微粉体の世界市場(13年は見込み、17年は予測値)
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2013年 12年比 2017年 12年比 12-17年
平均成長率はんだ粉 1,367億円 106.5% 1,725億円 134.5% 6.1% 貴金属粉末(プラチナ、パラジウム) 486億円 114.6% 586億円 138.2% 6.7% ジルコニア(湿式法) 349億円 107.4% 434億円 133.5% 6.0% カーボンナノチューブ(CNT) 31億円 114.8% 43億円 159.3% 9.8% - ■はんだ粉
用途は、全てクリームはんだ向けである。自動車用電子部品や、民生機器(携帯電話、PC、AV機器、デジタルカメラなど)のはんだ工程に使用されるため最終製品市場の影響を受けやすい。携帯電話や近年需要拡大が著しいタブレットは小型部品が多く、細かい配線が必要になるため、需要が棒はんだからシフトし、クリームはんだが増加している。また、近年、日本や欧州において、自動車の鉛フリーのクリームはんだ採用が要求されており、12年は、自動車向けの需要が増加している。今後、自動車や小型部品を多く実装する携帯電話・タブレットなどの需要が拡大し、特に自動車向け需要の増加が期待される。 - ■貴金属粉末(プラチナ、およびパラジウム)
プラチナ粉の8割強はHDD(PCの記憶装置)の磁性材料に使用されており、この市場にほぼ連動している。現在主流の磁気記録方式から次世代方式である熱アシスト記録方式にシフトすればプラチナ粉使用量がさらに倍増する可能性がある。
パラジウム粉は、高機能化を目的とした銀導電ペーストの添加剤として採用されており、一部の高品位グレード向け使用にとどまっている。 - ■ジルコニア(湿式法)
13年は349億円と見込まれる。需要の6割が自動車の排出ガス浄化用とする触媒原料で、自動車向け需要の影響を受ける傾向が強い。12年、自動車向け需要は国内では東日本大震災の影響からマイナス成長となった。海外では中国で日本車の不買運動などがあったが拡大を続けている。またファインセラミックス向けでは、金属代替による歯科材料(易着色性)、携帯電話向け電子部品、プリンター用顔料向け粉砕ボールなどの付加価値用途が世界的に拡大している。特に歯科材料向け需要が先進国で拡大しており、国内でも保険対象外(治療)でありながら、審美の追及を目的に適用例が増加しつつある。電子材料用途ではセラミックコンデンサーの他、圧電センサー、自動車用酸素センサーなどで使用される。ただセラミックコンデンサー向けは電子部品の小型化から20年前と比べ1個あたりの使用量が五分の一程度に減少しており、今後も新興国向け自動車需要の拡大などに伴う排出ガス浄化触媒需要、歯科材料などファインセラミックス需要の拡大を背景に、年率5〜6%の成長が期待される。 - ■カーボンナノチューブ(CNT)
1991年にNECによって発見され、量産技術が開発された先端ナノマテリアルである。ダイヤモンドと同等の硬度を持ち、高電流密度(銅の1,000倍)、高熱伝導(銅の10倍)、導電性などさまざまな特性・機能を持つ。
LiBの電極用材や搬送用トレーに用いられたが、市場の縮小や、代替品への移行で市場は横ばい推移となり、12年も電池用の不振から横ばいが続いた。
13年は、電池用ではLiB正極材への採用機運が高まるなど、再び需要が増加している。また搬送用トレーなどの樹脂添加用途も堅調に増加すると見込まれ、全体として回復しつつある。今後は、樹脂添加用およびLiB正極材を中心に市場は拡大が予測される。特に、LiB用需要はこの製品市場をけん引するとみられる。
東レは12年に世界で初めて2層CNTを使った透明導電フィルムの量産化技術を確立した。このフィルムは、90%以上の光透過率と、実用的に十分な導電性を高いレベルで両立し、現在主流のITOフィルムに比べ屈曲性に優れ、耐湿熱性や耐衝撃性も優れ、高い耐久性や実用上の信頼性を備えている。さらに無彩色な色目で、ディスプレイの色再現性を損ないにくく、近年急速に普及する電子書籍や電子看板などの用途に適している。 - ■調査のまとめ
- ■ナノ炭素材料は今後市場を拡大:カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン
この2品目は、最も成長が期待される。いずれもナノ炭素材料として発展途上の品目であるが、機能性を活かした用途展開が進められている。今後各種電池関連部材などでの需要拡大が見込まれ、すでにCNTではLiB用の電極素材として市場が拡大している。フラーレンも化粧品用途などが先行しているが、今後は有機薄膜太陽電池などの用途で拡大が期待される。 - ■電子材料用として市場拡大:高純度コロイダルシリカ、はんだ粉、窒化アルミニウム、貴金属粉末
はんだ粉は、鉛フリー化の進展や、クリームはんだの採用増によって市場が拡大している。高純度コロイダルシリカは代替不可素材として半導体関連の研磨剤として用途が確立されている。年々進行する半導体の微細化によってニーズがさらに拡大し続けている。各種電子材料にはさまざまな微粉体が使用されており、こうした高成長品目は代替付加機能とコストがバランスして市場が拡大している。 - ■ポリマー系:フェノール、シリコーン
フェノールは各種炭素材料の原材料として需要が拡大している。近年、LiBなどの電池市場が拡大して、関連する部材市場も需要が増加しつつある。シリコーンはLCDパネルの拡散板需要が拡大し、需要の増加につながっているほか、各種化粧品原料でも安定した需要がある。アクリル微粒子も光拡散用の市場が拡大している。
内容の詳細につきましては『2013年 微粉体市場の現状と将来展望』をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)