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『2016年 微粉体市場の現状と将来展望』まとまる(2016/6/17発表 第16052号)

微粉体の世界市場を調査

セルロースナノファイバー
サンプル供給中心から、商用利用、用途の拡大で20年に市場は12億円(15年比24.0倍)

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、アプリケーションの高機能化・高付加価値化ニーズが高まるにつれ、要求や役割が増している微粉体の世界市場を調査した。その結果を報告書「2016年 微粉体市場の現状と将来展望」にまとめた。

 この報告書では、汎用・無機6品目、金属9品目、金属酸化物4品目、セラミックス8品目、ポリマー16品目、その他注目素材6品目の6カテゴリー49品目の微粉体を対象に、特に用途や使用形態、ナノサイズ化の三つのポイントに焦点をあてて市場を分析した。

注目市場
1. セルロースナノファイバー
2016年見込2020年予測15年比
1.4億円12.0億円24.0倍
 セルロースナノファイバー(CNF)とは、樹木などを構成する細胞の骨格を構成する、径が数〜数十nm程度、長さが数μmのナノファイバーである。CNFは化学的に安定しており、鉄鋼の5倍の強度かつ1/5の軽量性、ガラスの1/50の低膨張などの特徴を有しており、近年研究開発が活発化している。CNFは、細胞壁を構成する繊維1本を取り出したシングルCNF(この場合径は4nm)と、シングルCNFが束の状態であるミクロフィブリル化CNFに大別される。現在、一部市販されているものは、径が数十nmのミクロフィブリル化CNFである。
 市場は中越パルプ工業や日本製紙をはじめ、スギノマシン、星光PMC、第一工業製薬などが参入している。現時点で多くはサンプル供給であるが、一部紙おむつやボールペンインク、増粘剤などで商用利用されており、2016年は1.4億円が見込まれる。新規参入や量産化も計画されており、2017年以降市場は本格化していくとみられる。単価は量産化により現状の5,000〜10,000円/kgから1,000円/kgまで下がると期待される。用途はシート(紙おむつ、振動板、ガスバリアフィルム)や化粧品原料、食品添加剤、樹脂複合材料(特に自動車)向けが有望視されており、利用が広がり、2020年に市場は12億円が予測される。
2. カーボンナノチューブ
2016年見込2020年予測15年比
70.0億円95.0億円158.3%
 カーボンナノチューブ(CNT)は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と単層カーボンナノチューブ(SWCNT)に大別される。MWCNTの直径は10〜100nm、SWCNTは約1nmである。MWCNTは製造が容易で、既に商用利用されており、量産化による低価格化が進んでいる。SWCNTは量産化が困難であり高コストであるが、「軽量かつ高硬度でありながら、高い柔軟性を有する」「電気や熱の伝導性が極めて高い」という性質から、注目度が高い。なお、ここではカーボンナノファイバーを含めて市場を捉えた。カーボンナノファイバーは、グラフェンシートが繊維の軸に垂直に積層した構造をとり、直径100〜200nm程度でありCNTより直径が大きい。
 需要は日本や欧米で一巡しており伸び悩んでいたが、近年は二次電池の導電助剤として中国で拡大している。中国での二次電池生産の増加に伴い、中国メーカーも数多く参入した。トップメーカーのCnano Technologyの生産能力増強もあり、市場は数量ベースで2016年に前年比22.2%増が見込まれる。SWCNTの量産化も相次いでいる。SWCNTは今後二次電池向けに加え、放熱ゴムや金属電極放熱素材、キャパシターなど、高付加価値用途への展開が期待される。
3. 炭化ケイ素
2016年見込2020年予測15年比
27.4億円41.4億円148.9%
 炭化ケイ素(SiC)はダイヤモンドとシリコンの混合的な性質を有しており、高硬度のほか、耐熱性、耐薬品性などに優れる。ここでは、ファインセラミックス向けを対象とした。近年は、半導体ウェハー材料用途が注目を集めている。
 主要用途は、摺動・耐熱部品といった産業機械部品向けと、プロセスチューブなどの半導体製造装置部品向けである。国内需要は、産業機械部品向けが横ばいであるが、半導体製造装置部品向けが拡大しており、微増となっている。一方、海外需要は、LiB電極材の耐熱治具などの産業機械部品向けが拡大をけん引している。近年注目を集めている半導体ウェハー材料向けについては、超高純度粉末が現在サンプル供給段階である。製造プロセスが複数ある中でまだスタンダードが確立されておらず、コスト面などの課題もあることから、商用利用が始まるのは2018年以降とみられる。商用利用の開始に伴い超高純度粉末の需要が増加し、市場が拡大すると予測される。
 サイズ別動向としては、焼結に適したサブミクロンサイズが一般的である。さらなる微細化により性能向上が期待できるものの、製造コストも上昇するためこれ以上の微細化ニーズはない。半導体ウェハー向けの超高純度品は、数mmレベルを一般グレードとして設定しているが、数百μmレベルも対応可能である。
調査結果の概要
微粉体の世界市場
1. カテゴリー別市場
カテゴリー2016年見込2020年予測15年比
汎用・無機(6品目)1兆4,956億円1兆6,750億円108.1%
金属(9品目)7,095億円7,560億円103.3%
金属酸化物(4品目)236億円257億円110.8%
セラミックス(7品目)5,111億円5,424億円103.4%
ポリマー(16品目)6,807億円7,723億円122.5%
その他注目素材(6品目)451億円690億円162.4%
合計(48品目)3兆4,657億円3兆8,404億円109.6%
2,140万トン2,316万トン109.5%
微粉体の世界市場はセラミックスカテゴリーの中空ガラスビーズを除く48品目合計である
四捨五入しているため、合計は必ずしも各数値の合算とは一致しない
 微粉体の世界市場は2016年に3兆4,657億円が見込まれる。微粉体のカテゴリーごとに利用される用途分野が異なり、汎用・無機やセラミックスでは化学・工業・産業分野向けが多いのに対し、金属酸化物やポリマーではライフサイエンス分野が多くなっている。2020年の市場は3兆8,404億円が予測される。
 汎用・無機の市場をけん引しているのは活性炭とフュームドシリカである。特に活性炭は、先進国で水や大気への規制強化、中国やASEAN諸国など新興国で水処理や大気汚染対策による需要増加で近年高成長し、今後も年率10%程度の成長が期待される。
 金属の市場は微増となっている。数量が圧倒的に多い鉄粉・鉄系合金粉が、全体の3割を占める。次いではんだ粉、銀粉、タンタル粉などの高付加価値製品の規模が大きい。
 金属酸化物はサンスクリーン剤など化粧品に利用される超微粒子酸化チタンが過半を占め、市場拡大をけん引している。超微粒子酸化亜鉛は海外での利用機運の高まりにより2016年から2020年にかけ、年率4%超の伸びが予測される。また、光触媒用酸化チタンは既存の外装材用途の安定的な需要に加え、可視光応答型の内装材向けの本格化が注目される。一方、酸化セリウム(研磨材)は縮小する。LCD向けの伸び鈍化とHDD市場の縮小が影響するとみられる。
 セラミックスは耐火物や、研磨材など幅広い用途で利用されているアルミナが市場の8割近くを占める。今後はアルミナが微増、チタン酸バリウムが微減となるが、他5品目はいずれも堅調に伸びると予想される。
 ポリマーはエレクトロニクス、ライフサイエンス、自動車など幅広い用途分野で利用されている。高吸水性樹脂が市場の8割以上を占める。直近ではスクラブ剤をはじめとする化粧品用途において、マイクロプラスチックビーズの利用を禁止する動きが強まっており、2015年12月には米国でそれを含む化粧品の製造・販売を禁ずる法律が成立したことで、一部のポリマーの需要縮小と、代替となる微粉体の開発・検討が進んでいる。
 その他注目素材は、樹脂添加用の炭素繊維や高純度コロイダルシリカが市場の多くを占めている。CNTやフラーレン、グラフェン、CNFは現状利用が限定的であるが、今後は用途開拓が進み高成長が期待される。
2. 主用途分野別市場
 主要用途分野の市場規模(2016年見込)は、化学・工業・産業分野が558万トン、ライフサイエンス分野が237万トン、環境・浄化分野が137万トン、自動車分野が123万トンである。化学・工業・産業分野は樹脂・ゴム添加用途に利用される炭酸カルシウムと、耐火物や研磨材に利用されるアルミナが大部分を占める。ライフサイエンス分野は、衛生材料、化粧品、食品用途で利用される。衛生材料用途が最も多く、次いで化粧品用途が多い。衛生材料用途は、紙おむつや生理用品などの吸収剤、歯科材料、生体適合材料向けなどが挙げられる。化粧品用途は、触感付与材や紫外線遮蔽材として、ファンデーション、口紅、サンスクリーン剤、乳液などに利用される。
3. 使用形態別市場
 主要使用形態の市場規模(2016年見込)は、添加・充填が932万トン、成形・焼結が336万トン、塗布・成膜が230万トンである。その他に研磨や吸着・ろ過などがある。添加・充填は炭酸カルシウムが95%以上を占める。炭酸カルシウムは製紙や樹脂・ゴム向けに利用される。塗布・成膜は衛生材料向けに利用される高吸水性樹脂が95%以上を占める。成形・焼結はアルミナが70%以上、鉄粉・鉄系合金粉が25%以上を占める。
 4. ナノサイズ化
 ここでは粒径1,000nm(1μm)未満をナノサイズとし市場規模を捉えた。市場規模(2016年見込)は228万トンである(市場全体の11%)。製紙材料・樹脂添加剤として以前から汎用的に利用されてきた炭酸カルシウムと、シリカ(結晶・溶融)とフュームドシリカと合わせて汎用・無機が市場の大部分を占める。金属、セラミックス、ポリマーは100〜1,000nmのサブミクロンレベルが一般的であり、金属酸化物やその他注目素材では100nm以下の領域での展開も進んでいる。
内容の詳細につきましては『2016年 微粉体市場の現状と将来展望』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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