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『5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020』まとまる(2020/2/28発表 第20018号)

世界の5G通信関連市場を調査

2025年世界市場予測(2018年比)
基地局は5G通信関連の投資が本格化し、11兆3,530億円(3.0倍)
スマホの5G通信対応比率は62.1%、9億台

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、世界各地・各国で商用化が始まった5G通信関連の世界市場を調査した。その結果を「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」にまとめた。
 この調査では、5G通信関連として、基地局3品目、エッジ機器(スマートフォンや自動車、監視カメラなど、ユーザー側終端製品)7品目、基地局用構成デバイス・材料9品目、RFデバイス・CPU7品目、無線通信デバイス3品目、放熱・ノイズ対策2品目、基板3品目、計34品目の市場を調査・分析するとともに、主要関連企業15社の事例分析を行った。

調査結果の概要
基地局の世界市場
 2019年見込2018年比2025年予測2018年比
D-RANマクロセルLTE向け1兆6,720億円79.0%
5G通信向け8,300億円2兆9,100億円
スモールセルLTE向け990億円56.6%
5G通信向け5,250億円
C-RAN2兆370億円132.3%7兆9,180億円5.1倍
合計4兆6,380億円121.1%11兆3,530億円3.0倍
 2019年の基地局世界市場は、LTE向け投資が減少するものの、5G通信向けや5G通信を見据えた投資が始まったことにより、2018年比21.1%増の4兆6,380億円が見込まれる。今後5G通信向け投資は本格化し、2025年に市場は同3.0倍の11兆3,530億円が予測される。
 基地局にはRUセクター(複数の無線送受信装置「RHH」をまとめたユニット)とBBU(ベースバンド処理装置)などが一体化したD-RAN基地局と、RUセクターとBBUが分離しており光ファイバーで接続しているC-RAN基地局に分けられる。また、D-RAN基地局はカバーエリアが広いマクロセル基地局(出力10W以上、カバーエリア300m以上)、カバーエリアが比較的狭いスモールセル基地局(出力10W未満、カバーエリア300m未満)に分けられる。
 D-RANマクロセル基地局市場は、新興国ではLTE向け投資が増加しているものの、先進国では一巡しているため縮小していたが、5G通信向けの投資が始まったことから、2019年は拡大が見込まれる。5G通信サービスを展開する各キャリアはカバレッジの確保を志向するため、初期投資として設置局数は増加する。ただし、各キャリアともに投資効率や立ち上げのスピードを重要視することから、既設LTE基地局のBBUのソフトウェアをアップデートし、5G通信に対応するアンテナやRUセクターを追加することで5G通信共用基地局とするアドオン部分への投資が中心となる。一方で、日本や中国、韓国、米国など光ファイバーの敷設率が高い国や地域ではカバレッジ対策としてC-RAN基地局を設置するケースもある。
 D-RANスモールセル基地局市場は、LTE向け投資の一巡と5G通信対策、C-RAN基地局の光張り出し局(光ファイバーで接続されたRUセクター)との競合によって一時的に縮小するとみられる。LTEのカバレッジが遅れている国はマクロセル基地局の設置を継続し、確保できている国は5G通信への移行も視野に入れ、マクロセル基地局へのアドオン投資やC-RAN基地局への投資を優先するためである。また、需要が期待される屋内用途でもDAS(Distributed Antenna System)やレピーターなどの受信装置と競合しているためである。中長期的には、NSA(LTEをアンカーバンドにした5G通信基地局)でLTEと同程度のカバレッジが実現したのち、高トラフィック対策でC-RAN基地局の光張り出し局と競合しながら需要が増加していくと予想される。5G通信の一つであるミリ波の普及なども追い風になるとみられる。
 C-RAN基地局は、BBU収容場所を親局に光ファイバーを用いてRUセクターを張り出すことによって広範囲のエリアをカバーすることが可能となることから、通信キャリアにとっては設備投資コストが抑えられ、省スペース化にも寄与する。また、複数の子局を集中制御し、干渉を防ぐことで通信の安定性や品質を担保できるなど、ネットワーク効率化の観点から設置が増えている。特に、5G通信の初期投資としてカバーエリアの拡大を考えた場合、人口密集度が高くトラフィック量が多いエリアでは光張り出し局の増設によるネットワーク拡張ニーズが高まると予想される。C-RAN基地局はLTE、5G通信とも収容できるが、将来的にはすべて5G通信化していくとみられる。ただし、過渡期はLTEと5G通信の混在仕様になる。中長期的には先行する中国などの投資が一段落すると市場はピークアウトしていくとみられる。
5G通信対応エッジ機器の世界市場
 2019年見込比率2025年予測比率
スマートフォン880万台0.6%9億台62.1%
スマートウォッチ2,000万台17.7%
監視カメラ僅少僅少僅少僅少
各エッジ機器世界市場における構成比
 スマートフォンやCPE(Customer Premises Equipment)、監視カメラなどで5G通信対応が先行している。また、2022年前後からスマートウォッチやスマートグラスなどの5G通信対応が始まると予想される。
 5G通信は6GHz以下の周波数帯を用いたSub6と24GHz以上の周波数帯を用いたミリ波に分けられるが、スマートフォンの 5G通信対応はSub6を中心に進んでいる。スマートフォンメーカー各社は早期にフラッグシップからミドルレンジまでを5G通信対応にして普及させたいとしており、特に、中国スマートフォンメーカーが1,500〜2,000RMB程度の価格帯で、他メーカーに先駆けて普及させたいと考えていることから、2020年は一時的に買い替えの促進が期待される。一方、ミリ波は利用できる国が限定的であることなどから、対応機種は大きく増加しないとみられる。
 スマートウォッチの5G通信対応は現在見られないが、通信機能が付与されていく中で、2021年頃から対応機種が徐々に投入されるとみられ、2025年には2,000万台が予測される。リアルタイム性を求められるアプリケーションなど、機能強化が期待される。
 5G通信対応の監視カメラは、現在中国の北京経済開発特区で、一部が稼働している程度である。現状では5G通信の必要性は低く、中長期的にも市場は僅少にとどまるとみられる。将来的にスマートシティ化が進み、セキュリティの向上などの観点からリアルタイムに多量の監視データを収集するなど、今と異なる用途が出てくれば市場形成の可能性はある。
注目デバイス・材料の世界市場
1. 基地局用アンテナ(基地局用構成デバイス・材料)
2019年見込2018年比2025年予測2018年比
4,560億円167.6%9,270億円3.4倍
 基地局で採用されるアンテナを対象とした。
 市場はRUセクター数と相関する。D-RAN基地局ではBBUとRRHが同じRUセクターにあり、アンテナはRUセクター当たり1〜3個搭載されるが、投資が進んでいるC-RAN基地局では、RUセクター数が増えることから、アンテナの出荷が増加し、市場が拡大すると予想される。
2. RRH(基地局用構成デバイス・材料)
2019年見込2018年比2025年予測2018年比
3,100億円130.8%1兆1,190億円4.7倍
 エッジ機器、もしくはBBUから受け取った信号を変換、増幅する無線送受信装置を対象とした。D-RAN基地局などではBBU当たり1つのRUセクターが搭載され、RUセクター当たり3〜5程度のRRHが接続されるが、BBU当たり10を超えるRUセクターを光張り出し局として集中制御するC-RAN基地局の登場により、RRHの需要が増加している。また、5G通信の方針として3GPP(通信仕様標準化プロジェクト)は省スペース化や高効率化を求め、アンテナ一体型のRRHを推奨しており、アンテナ一体型の代表であるMassive MIMOアンテナの需要が5G通信対応の進展とともに増加するとみられる。Massive MIMOアンテナは、32個以上搭載される個々のアンテナ素子に対してRF素子としてRRHが一つずつ搭載されるため、今後市場は大幅に拡大すると予想される。
3. 基地局用CPU・FPGA(基地局用構成デバイス・材料)
2019年見込2018年比2025年予測2018年比
2,553億円3.2倍1兆7,600億円22.3倍
 基地局向けで採用されるCPUやアクセラレーター用FPGAを対象とした。基地局向けCPUはBBUの構成部品の一つであり、A/Dコンバーターで変換されたデジタル信号をデジタル処理する機能を担っている。基地局ベンダーによってはFPGAを採用するケースもある。
 基地局向けCPUは、BBUの一部を構成する要素であることから、市場はBBUの動向と相関する。5G通信で帯域幅が広がるため、CPUに求められる処理能力は上がる。また、BBUごとの電源能力も限りがあるため、低消費電力化も求められている。一部基地局ベンダーでは、自社でCPUを内製している。
 C-RAN基地局への投資によって、集中型BBUに接続されるRUセクターの形式も多様になる。動的にネットワークの再構成を行うリコンフィグレーション性能が求められているため、FPGAの採用が進むとみられる。
4. モバイル機器用アンテナ(エッジ機器用デバイス)
2019年見込2018年比2025年予測2018年比
3,600億円102.0%9,850億円2.8倍
 携帯電話通信を行うために搭載されるアンテナを対象とした。BluetoothやWi-Fi、GPS、ワンセグなどのアンテナは対象外とした。
 対応する周波数の増加により、スマートフォンを中心に搭載されるアンテナ数は増加している。LTEの周波数帯は700MHzから2.5GHz程度まであり、比較的広帯域であることからアンテナ分割が望ましく、加えて、MIMOやキャリアアグリゲーションに対応することでさらにアンテナが必要となるためである。LTEのハイエンド端末では1台に7〜8個のアンテナが搭載されているケースもある。5G通信対応では、Sub6でアンテナの搭載係数は増加すると予想され、ミリ波では対応のアンテナが3〜4個搭載される。今後も市場は拡大が予想される。
5. ベーパーチャンバー(エッジ機器用デバイス)
2019年見込2018年比2025年予測2018年比
168億円3.8倍698億円15.9倍
 ここではスマートフォンやゲーミングPCなどで採用される厚み0.4mm未満の熱拡散デバイスを対象とした。
 ベーパーチャンバーは、以前はゲーミングPCやゲーミングスマートフォン、業務用タブレットなど限定的な採用にとどまっていたが、2019年にSamsung El. 「Galaxy S10」に採用されたことで本格的に市場が形成された。大手中国スマートフォンメーカーの5G通信対応モデルでも採用が始まっている。5G通信対応モデルではアプリケーションプロセッサー(以下、AP)の発熱が問題になるため、Sub6対応モデルが大幅に増加する2020年から2021年に市場は急拡大すると予想される。中国スマートフォンメーカーはミドルレンジまで5G通信対応を進めているが、ミドルレンジはグラファイトシートなど既存技術での対応となり、採用はフラッグシップからハイエンドにとどまり、ハイエンドの需要は飽和状態、また、APの放熱特性の向上によりベーパーチャンバーが不要になる可能性もあることから、その後、市場の伸びは鈍化する。しかし、2022年以降はSub6以上に発熱が問題になるミリ波対応モデルの増加により、市場が拡大すると予想される。
内容の詳細につきましては『5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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