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『2020年 微粉体市場の現状と将来展望』まとまる(2020/6/18発表 第20064号)

生分解性パウダー、カーボンナノチューブなど微粉体の世界市場を調査

2023年世界市場予測(2019年比)
生分解性パウダー 54億円(50.0%増)
マイクロプラスチック規制の強化により、化粧品の滑り剤で代替が進み拡大
カーボンナノチューブ 605億円(49.4%増)
リチウムイオン二次電池の導電助剤で採用され、EVの普及により拡大

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、樹脂や塗料・インキなどへの添加・充填、基材への塗布・成膜、粉末冶金をはじめとする焼結・成形、ろ過、研磨など、多岐にわたって使用され、素材やサイズ、形状によって多様な展開が可能な微粒子材料である微粉体の世界市場を調査した。その結果を「2020年 微粉体市場の現状と将来展望」にまとめた。
 この調査では微粉体を素材別に、汎用無機10品目、金属6品目、金属酸化物5品目、セラミックス7品目、ポリマー9品目、その他ナノ材料2品目の市場を調査・分析した。これに加え3Dプリンター用パウダーや非分解性ポリマー微粒子の代替となる生分解性パウダーなど用途別の注目市場もまとめた。

用途別注目市場
生分解性パウダー
2019年2018年比2023年予測2019年比
36億円105.9%54億円150.0%
 セルロースや球状セルロース、酢酸セルロース、フルーツパウダー、生分解性樹脂パウダーといった生分解性を有する微粒子パウダーを対象とした。マイクロプラスチック規制の強化から、化粧品向けを中心に採用が進んでいる。
 2015年12月以降、洗顔料やボディソープなどで使用されるスクラブ剤などマイクロビーズの使用が各国で規制され、PE(ポリエチレン)やPS(ポリスチレン)からセルロースやフルーツパウダーなどへの代替が進んだ。日本ではスクラブ剤を使用しない商品が一般化したが、欧州などでは代替が進んだことで、2019年の市場は2018年比5.9%増の36億円となった。
 近年、マイクロプラスチックの中でもマイクロビーズよりも粒径の小さいマイクロパウダーの規制が検討され始めている。マイクロパウダーは滑り性や触感付与のためにファンデーションや日焼け止めなどで滑り剤として使用される。2020年以降中国や欧州を中心に規制が強化され、PA(ポリアミド)やシリコーン、アクリルなどから球状セルロースや酢酸セルロース、生分解性樹脂パウダーへ代替されるとみられる。マイクロプラスチック規制の強化により、生分解性パウダーの用途が広がっていき、2023年の市場は2019年比50.0%増の54億円が予測される。
3Dプリンター用パウダー
 2019年2018年比2023年予測2019年比
金属パウダー1,614億円187.2%4,339億円2.7倍
樹脂パウダー250億円119.0%420億円168.0%
 3Dプリンターの普及により、3Dプリンターで部品などを成形する際に使用する金属パウダー、樹脂パウダーの市場は急拡大している。
 金属パウダーは、海外を中心に航空宇宙や医療分野で採用が進んでいる。部品を一体化できることから部品点数の大幅な減少や軽量化、高強度化が可能となり、航空宇宙分野では航空機エンジンパーツが量産されている。医療分野ではインプラントで量産実績があり、人工骨でも採用される。 また、自動車分野での採用も進みつつあり、BMWやVolkswagenが採用を開始している。なお、日本では試作や金型での採用が主であり、量産実績は少ない。
 樹脂パウダーは、SLS(粉末積層造形法)で使用されるパウダーを対象とした。市場の大半をPAが占めており、試作品向けに採用されている。PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などスーパーエンプラ系のパウダーが投入されており、航空宇宙や自動車、医療分野で今後実用化が進むと期待される。
注目市場
カーボンナノチューブ
2019年2018年比2023年予測2019年比
405億円109.2%605億円149.4%
 1nm〜200nmの繊維状・筒状粒子で、強度や高電流密度、高熱伝導、導電性に優れる。
 リチウムイオン二次電池の正極活物質であるリン酸鉄リチウムの導電助剤として使用されており、中国でのEVやEVトラック・バスの需要増加により拡大してきた。2019年は中国でのEV購入補助金の大幅な減額による電池需要の鈍化に伴い、カーボンナノチューブの伸びも緩やかとなった。しかし、EVの世界的な普及や負極活物質の導電助剤での採用増加により市場の拡大は続き、2023年には2019年比49.4%増の605億円が予測される。
窒化ホウ素
2019年2018年比2023年予測2019年比
149億円99.3%191億円128.2%
 0.5μm〜30μmの鱗片状・球状粒子で、高温潤滑性や電気絶縁性、化学的安定性、熱伝導性に優れる六方晶窒化ホウ素を対象とした。
 半導体製造装置用部品やアルミ加工用鋳造型での使用が多く、2019年は半導体需要の停滞により市場は縮小した。EVや5G通信の普及によりパワー半導体向け放熱フィラーで採用が伸び、化粧品添加剤ではマイクロプラスチック規制により代替品としての採用が期待されることから、2023年の市場は2019年比28.2%増の191億円が予測される。
超微粒子酸化亜鉛
2019年2018年比2023年予測2019年比
66億円103.1%77億円116.7%
 10nm〜100nmの球状粒子で紫外線遮蔽性や透明性に優れる。
 紫外線防止剤としてサンスクリーンやファンデーションなど化粧品で主に使用されている。サンスクリーンの需要増加、ファンデーションや化粧下地、乳液、口紅など化粧品での採用増加により、市場は堅調に伸びている。欧州でガイドラインの変更により超微粒子酸化亜鉛の化粧品への含有が認められたことで、欧州における需要増加が予想される。また、米国ハワイ州で2021年から一部の有機系紫外線吸収剤を含有するサンスクリーンの販売が禁止されることから、超微粒子酸化亜鉛への代替が進むとみられる。
高吸水性樹脂
2019年2018年比2023年予測2019年比
9,530億円102.8%1兆572億円110.9%
 100μm〜600μmの球状粒子で吸水性や保水性、ゲル化性、膨潤性、粘着性に優れる。原料はアクリル酸やポリアクリル酸などである。
 おむつや生理用品など衛生用品の吸収材として使用されている。これまで欧州や北米が需要の中心であったが、近年では中国や東南アジア、中東でも衛生用品が伸びていることから、今後は新興国の需要が市場の拡大をけん引するとみられる。しかし、参入メーカーが相次いで生産能力増強を図ったことから、供給過剰により価格下落が起きている。そのため、市場の伸びは緩やかになるとみられ、2023年に市場は2019年比10.9%増が予測される。
調査結果の概要
微粉体の世界市場
 2019年2018年比2023年予測2019年比
汎用無機2兆8,967億円102.4%3兆2,777億円113.2%
金属7,273億円98.1%9,392億円129.1%
金属酸化物492億円98.2%583億円118.5%
セラミックス6,195億円97.6%6,822億円110.1%
ポリマー1兆808億円102.9%1兆2,173億円112.6%
その他ナノ材料406億円109.4%609億円150.0%
合計5兆4,140億円101.3%6兆2,355億円115.2%
市場データは四捨五入している
 微粉体の世界市場は、2019年に5兆4,140億円となった。2023年には2019年比15.2%増の6兆2,355億円が予測される。
 カテゴリー別で最も市場規模が大きいのが汎用無機である。活性炭が中国や東南アジアなど新興国における水処理・環境浄化ニーズの高まりにより伸びており、工業用吸着剤や自動車排ガス処理用触媒として使用されるゼオライトも好調である。
 金属や金属酸化物、セラミックスは、半導体需要の停滞により2019年の市場は縮小した。今後は半導体需要の回復が予想されることや、金属は3Dプリンターの成形材料として使用されるチタン粉やアルミニウム粉、金属酸化物は高純度酸化チタンやサンスクリーンなど化粧品で採用される超微粒子酸化チタンや超微粒子酸化亜鉛、セラミックスではチタン酸バリウムが伸びることで市場の拡大が予想される。
 汎用無機に次ぐ市場規模であるポリマーは、エレクトロニクスや自動車での需要増加により拡大している。また、3Dプリンター用の成形材料であるポリアミドの伸びが予想される。一方、海洋汚染問題を契機に規制が進んだことで、化粧品向けマイクロビーズの需要が減少している。
 その他ナノ材料は、カーボンナノチューブが二次電池材料として急成長している。今後、セルロースナノファイバーが量産体制構築や新規用途開拓、コスト低減などにより伸びが期待される。
内容の詳細につきましては『2020年 微粉体市場の現状と将来展望』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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