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『2020 人工知能ビジネス総調査』まとまる(2020/10/12発表 第20107号)

AIビジネスの国内市場 20年度に1兆円を超え、25年度に2兆円規模へ拡大 デジタルトランスフォーメーションの要素技術の一つとして、利用増加

2025年度市場予測(2019年度比)
エッジAIコンピューティング 565億円(4.2倍)
さまざまな機器への搭載が期待され、特に自動運転では不可欠な技術として開発加速
OCRソリューション 303億円(2.3倍)
RPAなど周辺システムとの連携により、業務全体の自動化進む
需要予測ソリューション 304億円(74.7%増)
受発注システムと連携し、予測から発注までの自動化進展

 マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、生産性向上や働き方改革、企業競争力の向上などを目的に、積極的な投資が進んでいるAI(Artificial Intelligence:人工知能)の国内市場を調査した。その結果を「2020 人工知能ビジネス総調査」にまとめた。
 この調査では、AIを活用した分析サービスをはじめ、AI環境を構築するためのコンサルティングやSI(システムインテグレーション)、AI環境を支えるアプリケーションやプラットフォームなどをAIビジネスとし、カテゴリー別、業種別にその市場を分析したほか、AI活用が進んでいるソリューション市場、エッジAIコンピューティング市場も捉えた。また、ユーザーアンケートによりAIの導入実態などを把握し、AIビジネス市場を総括した。

1. 市場分析
調査結果の概要
AIビジネスの国内市場
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
1兆1,084億円115.4%1兆9,357億円2.0倍
 AIが注目され始めた2016年度頃は、AIへの期待感から漠然と導入を検討する企業がみられたが、2018年度以降は、具体的な業務課題の解消に向け活用を検討する企業が増えている。ベンダー側のノウハウの蓄積と共にソリューションが体系化されつつあり、2019年度には実証実験から本格導入に移るケースも増えたことで、市場は大きく拡大した。
 AIを活用するソリューションでは、初期段階として事務処理や顧客問合せ対応など、ある程度定型化された業務の効率化/自動化を目的とした導入が進展している。第二段階として知識を有した従業員や熟練者などが実施していた業務を、ノウハウに関係なく可能とし業務品質を平準化するソリューション、第三段階として蓄積されたデータを用いた、ビジネスの高度化を目的とした活用も今後進んでいくとみられる。
 2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、プロジェクト遅延や新規案件の延期などが一時的にみられた。しかし、リモートワークの急速な普及もあり、デジタル技術を活用した構造改革を積極的に進めている企業も多く、経済状況が悪化している中でも企業競争力向上の取組みの一環として、AIへの投資は優先的に行われるとみられ、市場は2019年度比15.4%増の1兆1,084億円が見込まれる。
 2021年度以降は、企業がデジタルトランスフォーメーションを実現するための要素技術の一つとしてAIの利用がさらに増加していき、2025年度には2019年度比2.0倍の1兆9,357億円が予測される。
エッジAIコンピューティングの国内市場
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
177億円133.1%565億円4.2倍
 エッジAIコンピューティングは、クラウド上やデータセンターなどで実行されることが多いAIの学習/推論処理機能を組み込み機器や機器(エッジ)側のサーバーで行うことである。エッジ側での処理により、リアルタイム性が高くなり、家電やモバイル端末、車載デバイスなどの民生機器、オフィス機器、FAや輸送関連、リテール関連などの産業機器とさまざまな機器への搭載が期待される。特に、タイムラグがなく結果を即座に反映させることができるため、自動運転に不可欠な技術であり、大手自動車メーカーや自動車部品メーカーがAIベンダーと自動運転の高度化に向けた共同開発を加速させていくとみられる。
 2019年度は試作品開発のための検証が中心であったが、2020年度には具体的な試作品開発へと進んでいる。新型コロナウイルス感染症の影響によりプロジェクトの延期などもみられたが、FAや輸送関連などの産業分野ではAI活用に関する意欲は低下しておらず、下半期にはプロジェクトの再開により、市場は拡大するとみられる。2021年度以降、AIが組み込まれた機器の量産化やアプリケーション開発が本格化していき、2025年度には2019年度比4.2倍の565億円が予測される。
注目AI活用ソリューション市場
 業務効率化/自動化に関連するソリューションとしてOCRやRPA、チャットボットなどがあげられる。このほか業務品質平準化では次世代コンタクトセンターソリューション、メンテナンスソリューション、需要予測ソリューションなど、ビジネスの高度化を目的とした活用ではパーソナライズドレコメンドソリューションや店舗支援ソリューションなどがあげられる。
OCRソリューション
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
160億円124.0%303億円2.3倍
 OCR(Optical Character Recognition)とは紙媒体に記載されている文字を読み取り、テキストデータに変換する技術である。AIを活用することで、非定型帳票や手書き文字でも高い精度での読み取りが可能となる。電子データでの業務は増えているものの、紙を主とする定型業務はいまだに多く、業務効率化や生産性向上など働き方改革の推進を目的に、需要が高まっている。
 OCRのみではデータの読み取りという一部分の業務の効率化にとどまってしまうため、RPAと連携させ読み取ったデータを勤怠管理や経費精算など各システムへ自動で転記する、OCRと顔認識技術を組み合わせオンラインでの本人確認(eKYC)ソリューションといった、周辺システムとの連携による業務全体の自動化に向けた活用が進められている。
 新型コロナウイルス感染症の影響によって本格的な働き方改革に取り組む企業が増加しており、業務自動化ニーズが高まっていくとみられることから、2025年度には2019年度比2.3倍の303億円が予測される。
チャットボットソリューション
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
188億円126.2%368億円2.5倍
 従来、顧客の問合せや社内における質問対応は、FAQページの作成やメールや電話での返答が主体であったが、チャットボットの登場で問合せの自動応対による業務効率化が可能となっている。
 2020年度は在宅時間の増加に伴いネット経由での問合せが急増したことで窓口対応がひっ迫しており、業務負担の軽減からチャットボット市場は拡大している。用途も、問合せ対応以外に、顧客に対する満足度向上や商品のレコメンドなど企業の収益向上を目的とした利用やサービス業での予約対応など、利用範囲が広がっている。
 また、導入に伴うコンサルティングや導入後の回答精度の維持、チューニング、ナレッジメンテナンスなどが必須であることから、市場は拡大を続け、2025年度には368億円が予測される。
需要予測ソリューション
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
203億円116.7%304億円174.7%
 商品情報、受注実績、気象情報、カレンダー情報などを活用し、商品の需要を予測する需要予測ソリューションを対象とした。需要予測を行う製品や構築のためのAI基盤やインフラ、導入のためのSIのほか、ユーザーがより最適な分析アプリケーションを利用するためのコンサルティングサービスやユーザーから各種データを預かり分析を行う分析アウトソーシングサービスなども含む。
 現時点では、予測結果を活用して手動で発注を行うケースが多いが、徐々に自動化が進み、将来的には受発注システムと連携し、予測から発注まで自動化されるとみられる。
 分析については、ユーザー側にデータサイエンティストが不足していることから、現時点ではアウトソーシングするケースが多いが、大規模企業ではこれらのノウハウを自社内で蓄積したい意向もあり、長期的にはアウトソーシングサービスの需要は中堅や中小企業が中心になるとみられる。
パーソナライズドレコメンドソリューション
2020年度見込2019年度比2025年度予測2019年度比
102億円117.2%180億円2.1倍
 EC/Webサイト利用者の行動/購買履歴を分析し、嗜好性に応じた商品/サービス(アイテム)をレコメンドするソリューション、近似行動する利用者の行動/購買履歴に応じたおすすめアイテムをレコメンドするソリューションを対象とした。
 従来、利用者の属性(年代、性別、学歴、年収など)でセグメント化し設定したターゲットへのレコメンド、閲覧/購入したアイテムにひもづいた関連アイテムを設定するといった手法が多かったが、近年はライフスタイルの多様化に伴い、個別の嗜好性分析を行うパーソナライズドレコメンドの需要が高まっている。
 レコメンドソリューションはECサイトでの導入が進んできたが、2017年度からは転職サイトや不動産サイト、動画サイト、電子書籍サイトなど、用途が広がっている。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、実店舗を持つ小売事業者もECサイトでの販売の注力度を高めており、2020年度は2019年度比17.2%増が見込まれる。
2. ユーザーアンケート調査(n=520)
勤務先における2019年度のAI投資予算勤務先における2020年度におけるAI投資予算の増減
2020 人工知能ビジネス総調査:2. ユーザーアンケート調査:勤務先における2019年度のAI投資予算グラフ 2020 人工知能ビジネス総調査:2. ユーザーアンケート調査:勤務先における2020年度におけるAI投資予算の増減グラフ
 AIを利用もしくは3年以内に導入する計画がある企業で、導入・検討状況を把握している担当者520サンプルに対するアンケートの結果、2019年度のAI投資予算としては、1億円以上〜5億円未満が最も多く、1億円以上のAI投資予算を有する企業は3割以上となった。2020年度のAI投資予算は、前年度比で6割以上が増加(増加した・やや増加した)と回答し、減少(減少した・やや減少した)は1割にも満たなかった。コロナ禍においてもAI投資予算は増加が期待できることがユーザーアンケートからもうかがえ、今後のAIビジネスの進展、AI関連市場のさらなる拡大が期待できる結果となった。
内容の詳細につきましては『2020 人工知能ビジネス総調査』をご覧ください。
報道関係のお問い合わせは
富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)

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