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『2020年 プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望』まとまる(2020/10/22発表 第20111号)
プラスチックフィルム・シート市場の調査結果 脱プラスチックを背景に環境対応の製品需要が増加
- ■2023年世界市場予測(2019年比)
- ■プラスチックフィルム・シート47品目 25兆1,993億円(3.6%増)
- 2021年に需要は回復に向かい、以降は環境対応の製品を軸に堅調に拡大
- ■フィルム代替紙製品 140億円(20.0倍)
- 大手食品メーカーの包材としての採用によりヒートシール紙などが伸びる
- ■PLAフィルム・シート 897億円(95.0%増)
- 石油プラスチックの代替需要を獲得し、北米や欧州を中心に拡大
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋小伝馬町 TEL:03-3664-5839 社長:田中 一志)は、需要が大きい容器・包装用途を中心に、脱プラスチックを背景としたバイオプラスチックやリサイクル原料を使用した環境対応の製品の採用増加、また、フィルム代替紙製品の広がりなどが注目される、プラスチックフィルム・シートの市場を調査した。その結果を「2020年 プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」にまとめた。
- ■調査結果の概要
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■プラスチックフィルム・シート47品目の世界市場
2020年見込 2019年比 2023年予測 2019年比 汎用樹脂 17兆5,174億円 94.4% 18兆6,853億円 100.7% エンプラ 3兆2,790億円 93.4% 3兆7,050億円 105.6% 環境対応 2兆4,120億円 106.8% 2兆8,090億円 124.4% 合計 23兆2,083億円 95.4% 25兆1,993億円 103.6% -
食品容器・包装用途での採用増加や、自動車や産業機器などの生産台数の伸びに伴う需要増加により、市場は堅調に拡大してきた。しかし、2020年は前半に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、外食産業の営業制限や各種大型イベントが中止となったため、最大用途である食品容器・包装向けが大幅に縮小している。また、自動車や航空機、スマートフォンなどの生産・出荷台数の減少により、関連するプラスチックフィルム・シートも連動して需要が減少している。汎用樹脂やエンプラが大きく縮小しているため、2020年の市場は2019年比4.6%減が見込まれる。しかし、脱プラスチックの動きを背景に、PLAフィルム・シートやバイオプラスチックフィルム・シートといった環境対応の製品は需要が増えている。
2021年の市場は、2019年の水準を下回るものの、多くの品目で需要は回復するとみられる。2022年以降は、環境対応やエンプラの伸びがけん引し、市場拡大が予想される。
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新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、飛沫防止対策品であるパーティションやフェイスシールド、カーテンなどで使用される製品の需要が増えている。パーティション用途では、透明性や美観性に優れ、高硬度で傷がつきにくいPMMAシートの需要が高まっている。また、PMMAシートの需給ひっ迫によりPETプレートも代替需要を獲得している。フェイスシールド用途では、比較的安価なPETフィルムやA−PETシートが、銀行や小売店などで多く使用されている。カーテン用途では、PVCフィルムなどが採用されている。
PPフィルムはマスクやウェットティシュなどの衛生用品や食品包装用途で一時的に需要が高まった。また、アルコール消毒液耐性を有するPVDFフィルムは、建材分野で内装用途を中心に需要が増えている。
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■2019年から2023年の品目別CAGRランキング
品目 2019年-2023年
CAGR1 フィルム代替紙製品 111.5% 2 PLAフィルム・シート 18.2% 3 生分解性プラスチックフィルム・シート 14.0% 4 LCPフィルム 6.9% 5 バイオPEフィルム 6.8% - フィルム代替紙製品は脱プラスチックの動きから大幅な需要増加が予想される。PLAフィルム・シートは環境意識の高まりにより、北米や欧州を中心に弁当容器などで採用が増える。生分解性プラスチックフィルム・シートやバイオPEフィルムは欧州を中心にレジ袋向けの伸びが期待される。LCPフィルムは5G通信の普及に伴う高周波対応部材での需要が増えるとみられる。
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■プラスチックフィルム・シート50品目の国内市場
2020年見込 2019年比 2023年予測 2019年比 汎用樹脂 1兆1,289億円 93.8% 1兆1,327億円 94.2% エンプラ 4,089億円 94.7% 4,487億円 104.0% 環境対応 1,887億円 100.4% 2,054億円 109.3% 合計 1兆7,264億円 94.7% 1兆7,867億円 98.0%
※リサイクルPETフィルム・シートは、PETフィルム(包装用)、PETフィルム(工業用・その他)A−PET・O−PETシートの内数であるため、一部数値が重複している。 -
2019年は、フードロス削減の動きに対応したCVSや量販店の取り組みにより、食品包材の使用量減少や薄肉化などが進んだため、60%以上を占める汎用樹脂の需要減少が影響し、国内市場は2018年比1.9%減となった。
2020年は、新型コロナウイルス感染症の流行により、外食関連の包材をはじめ、自動車や航空機、建材などに関連するフィルム・シートの需要が軒並み減少しており、市場は2019年比5.3%減が見込まれる。2021年以降、需要は回復に向かうものの、感染症の収束に時間を要するほか、フードロス削減やレジ袋有料化などの環境対策により、構成比の高い汎用樹脂の需要が低迷するため、2023年の市場は2019年比2.0%減が予測される。一方、環境負荷の低減を目的に採用が進むバイオプラスチックフィルム・シートやフィルム代替紙製品などの環境対応の製品は堅調な伸びが期待される。
- ■注目市場
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■フィルム代替紙製品
2020年見込 2019年比 2023年予測 2019年比 世界市場 36億円 5.1倍 140億円 20.0倍 国内市場 8億円 4.0倍 42億円 21.0倍 -
環境問題への対応で脱プラスチックの動きが強まっており、プラスチックフィルムの代替素材として紙が注目されている。中でも、ヒートシール紙とバリア紙の製品化が進んでいる。ヒートシール紙は紙基材にヒートシール層が塗工されており、主に二次包装として利用される。バリア紙は紙基材にバリアコート層が塗工され、一次包装でバリアフィルムの代替として採用される。
紙包材は、フィルム系包材と比べて、価格面以外にも見た目やしわになりやすい点など課題があるものの、フィルム代替として需要は急増している。特に、レジ袋や食品包材など、使い捨てプラスチックの代替として伸びている。
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以前から技術的に製品化が可能であったが、コスト面の課題や需要動向により、2017年頃までは本格的な製品展開はみられなかった。脱プラスチックの動きを受けて、2019年に大手食品メーカーが粉末飲料や菓子類の包材にヒートシール紙を採用するなど、市場は本格的に立ち上がり、2020年は36億円の市場が見込まれる。
現状、PETフィルムやOPPフィルムなどの各種フィルム代替として、ヒートシール紙の使用が中心である。今後、バリア性が不要なフィルムの代替需要が増えるとみられる。バリア紙はチョコレートなどの一部菓子類の包材として採用されているが、価格面やバリア性の向上などが課題となっている。
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■PLAフィルム・シート
2020年見込 2019年比 2023年予測 2019年比 世界市場 556億円 120.9% 897億円 195.0% 国内市場 19億円 100.0% 21億円 110.5% -
PLA(ポリ乳酸)は植物由来の生分解性プラスチックであり、フィルム・シートは主に食品用途の容器・包装で使用される。特に、シートがサラダ容器やフルーツ用カップ、鶏卵用パックなどで採用が増えている。
環境意識の高まりにより、石油プラスチックの代替需要が増加している。特に、欧州や北米での需要が高い。欧州では2021年から食器やストローなどで使い捨てプラスチックの使用が禁止となるため、PLAへの切り替えが進んでいる。また、韓国では大手コーヒーショップチェーンが食品包材として採用している。
需要が急増しているため、原料供給がタイトになっており、大口ユーザー向けに供給が集中する傾向がみられる。原料メーカーの生産設備の増強により供給が安定するのは2022年から2023年頃になるが、当面は年率15%以上の市場拡大が期待される。
国内ではプラスチック資源循環戦略の数値目標に沿ってバイオプラスチックの採用が進むため、PLAについても脱プラスチックの動きを背景に市場拡大が期待される。
内容の詳細につきましては『2020年 プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望』をご覧ください。
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- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)