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『2021年 パッケージングマテリアルの現状と将来展望』まとまる(2021/9/30発表 第21093号)
容器包装・材料の国内市場を調査
- ■2024年市場予測(2020年比)
- ■容器包装・材料 4兆831億円(3.5%増)
脱プラスチックの影響で包装資材は縮小も、飲料・液体容器や食品容器包装がけん引- ■PETボトル 4,195億円(17.0%増)
リサイクル樹脂やバイオ樹脂などの採用も増え、拡大- ■ヒートシール紙 33億円(5.5倍)
脱プラスチック包装で紙の採用増。FSC認証紙の普及も追い風
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 田中 一志03-3664-5839)は、SDGs(持続可能な開発目標)対応要求の高まりを背景に、バリア性を訴求した包材や、紙・バイオ樹脂をはじめとする非石化・環境対応素材の採用、さらにはプラスチックの回収スキーム構築による廃棄量削減などの取り組みが進んでいる容器包装・材料の国内市場を調査した。その結果を「2021年 パッケージングマテリアルの現状と将来展望」にまとめた。
- ■調査結果の概要
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■容器包装・材料の国内市場
2020年 2024年予測 2020年比 飲料・液体容器 1兆3,673億円 1兆4,397億円 105.3% 食品容器包装 1兆1,062億円 1兆1,446億円 103.5% 軟包装・フィルム・シート 9,097億円 9,360億円 102.9% 包装資材 4,744億円 4,698億円 99.0% メディカル 872億円 929億円 106.5% 合計 3兆9,447億円 4兆831億円 103.5% -
国内の容器包装・材料市場は成熟しているものの、高齢者の増加や個食化の進行などを背景とした中食需要の増加や、バリア性などの機能を付与した高付加価値品の採用増加により、2019年まで微増が続いていた。2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大および防止対策の影響により、飲料・液体容器、包装資材を中心に全分野でマイナスとなり、前年比3.2%減となった。主に、テレワークの普及によるCVS向け飲料・食品の容器包装、外食産業向け包装資材の減少、さらにはイベント会場で使用される容器の需要が大幅に減少したことが大きな要因となった。
一方で、巣ごもりによる中食・内食需要の増加から、スーパーマーケットを中心に食料品の販売が拡大したことや、飲食店によるテイクアウト・デリバリーサービスの展開が進んだことで、容器包装やフィルム包装の需要が増えた。また、賞味期限延長を可能とする高バリア性材料の採用、衛生向上を目的にスーパーマーケットでの惣菜の販売がバイキング方式から個包装にシフトしたことによるフードパックの採用増加など、新たな需要もみられた。
包装資材は脱プラスチックの影響により2020年比で縮小が予想されるが、ほかのカテゴリーが好調に推移し、全体市場は2024年には2019年の規模まで回復し、4兆831億円が予測される。 -
1)飲料・液体容器
2020年は外出機会の減少による清涼飲料向けの不調により、ほぼすべての品目が縮小し、前年比4.5%減となった。しかし、PE・PPボトルは、アルコール除菌液向けや、巣ごもり需要によるマヨネーズなど家庭用調味料向けが増加したため、伸びた。2021年以降市場は順調に回復し、紙容器の採用やプラスチック飲料容器における環境対応製品の開発などが進むことで、拡大が予想される。 -
2)食品容器包装
2020年は中食需要の増加により、スーパーマーケット向けを中心とした惣菜容器やレンジアップ容器が好調だったことから、市場は前年比0.7%減にとどまった。また、テイクアウト・デリバリーサービスの展開により急きょ容器が必要になったユーザーが多かった。最初は比較的安価なPSP食品容器〈汎用〉やHIPS食品容器が選択されていたが、現在では、レンジアップの可否など提供する食品に適した容器を選択するユーザーが増えており、発泡容器や耐熱性を有する中皿、ふた材の需要が増加している。
環境対応製品としては、脱プラスチックを目的に容器の薄肉化が進められてきた。しかし、薄肉化も限界に近づきつつあり、大手食品メーカーはバイオ樹脂、リサイクル樹脂を積極的に使用する方針に切り替えている。 -
3)軟包装・フィルム・シート
2020年は土産物や業務用包材などの需要減少やフードロス削減による食品の生産量減少に伴い、市場は前年比2.1%減となった。
紙製品の採用が増えており、バリア紙やヒートシール紙などの需要が増加している。ヒートシール紙は2019年に、コーティングを施すことでプラスチック製品と同程度の機能を付与したバリア紙は2020年に本格的に市場が立ち上がった。また、パウチでバイオPETやリサイクルPETを使用した製品の比率が上昇しており、大日本印刷や凸版印刷などを中心にモノマテリアル対応パウチの実用化・開発が行われている。 -
4)包装資材
2020年は最終製品の需要減少に伴い多くの包装資材が縮小し、市場は前年比7.3%減となった。特に、2020年7月からの有料化によりレジ袋が大きく縮小した。
プラスチック資源循環促進法により、レジ袋に続いて、2022年4月からストロー、カトラリーの有料化などが予定されている。今後の需要減少が予想される一方で、レジ袋同様に環境対応製品であれば、無料配布の対象となる可能性もあり、さまざまな環境対応製品が展開されるとみられる。環境対応製品は高価格であることから、2022年以降は緩やかな市場拡大が予想される。 -
5)メディカル
2020年は軽度の症状での受診控えや緊急ではない手術の実施を控える動きがみられたため、PTPシートの伸びは緩やかとなり、市場規模の大きい輸液バッグ・ボトルは減少したものの、高齢化により医薬品は堅調な需要があることから、前年比0.7%減にとどまった。
今後は、高いバリア性により長期保存が可能なアルミチューブや、在宅医療や訪問診療が増加することで利便性や安全性の高いプレフィルドシリンジが伸長し、市場は拡大するとみられる。 -
■容器包装・材料における環境対応素材の国内市場
2020年 2024年予測 2020年比 環境
対応
素材紙 228.6万トン 237.9万トン 104.1% リサイクル樹脂 18.6万トン 32.7万トン 175.8% バイオ樹脂 9.0万トン 14.9万トン 165.6% その他環境対応素材 2.9万トン 2.9万トン 100.0% 小計 259.2万トン 288.3万トン 111.2% その他 438.1万トン 417.5万トン 95.3% 合計 697.3万トン 705.8万トン 101.2% -
2020年の容器包装・材料における環境対応素材の採用は259.2万トンであり、市場の37%を占めた。2024年には288.3万トンに拡大し、41%まで上昇するとみられる。
環境対応素材は紙の比率が高く、紙器、飲料カートン、紙カップ、バッグインボックスなどで採用されている。脱プラスチックを背景に紙カップや飲料カートンなどが代替需要を獲得しており、石化由来樹脂が主流のパウチやラミネートチューブなどでも紙を使用した製品が展開されている。
リサイクル樹脂は一度使用した容器を粉砕・洗浄し、再び使用できるように加工した材料である。PETボトルでの採用が多く、ボトルtoボトルの取り組み強化により、大きく伸びるとみられる。バイオ樹脂はバイオマス(植物)を原料とした材料であり、バイオPETやPLAなどが挙げられる。有料化の影響もあり、レジ袋向けの需要が増加している。
その他環境素材として、タルク、石灰石複合材料、竹、ライスレジンなどがあり、特にタルクが注目されている。 - ■注目市場
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■PETボトル
2020年 2024年予測 2020年比 3,585億円 4,195億円 117.0%
2020年の市場は、新型コロナにより外出機会が減少したことで清涼飲料向けが苦戦し、前年比4.9%減となった。脱プラスチックの動きはあるものの、リサイクル率の高さから紙容器への移行などは少ないとみられる。また、単価の高いリサイクル樹脂やバイオ樹脂の採用も増えており、2021年以降は高い伸びで市場が拡大するとみられる。 -
■パルプモールド容器
2020年 2024年予測 2020年比 104億円 114億円 109.6%
内容物に応じた形状の成形が可能で、包装作業の単純化が図れることから発泡スチロールからの切り替えが進んでいる。また、使用後も古紙リサイクルのルートを利用できる利点がある。
SNS映えすることや環境面でのアピールができることから、テイクアウト・デリバリー容器での採用が広がっており、2020年は巣ごもり需要により特に好調だった。また、化粧品をはじめとしたパッケージでの採用も始まっており、新たな用途開拓が期待される。 -
■ヒートシール紙
2020年 2024年予測 2020年比 6億円 33億円 5.5倍
2020年は採用が増加した一方で、新型コロナの影響により工場の稼働停止などが起きたため、テストや物性などの検証が遅れ、一時的に市場が停滞した。2021年以降は、引き続き採用が進むことに加え、FSC認証紙の普及が追い風となり、市場は大きく拡大するとみられる。
内容の詳細につきましては『2021年 パッケージングマテリアルの現状と将来展望』をご覧ください。
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- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3664-5697(窓口:富士経済グループ広報部)