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『2023 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー戦略編』まとまる(2023/5/22発表 第23057号)
パブリッククラウド市場を調査 DX実現を目的としたIaaS/PaaSの伸びが市場拡大をけん引
- ■2026年度国内市場予測(2021年度比)
- ■パブリッククラウド(リソース提供) 3兆4,784億円(81.6%増)
PaaSの大幅な伸びが拡大をけん引- ■IaaS/PaaS市場におけるDX関連システム基盤 3,409億円(95.0%増)
データ分析基盤やAI/機械学習サービスの利用が伸長- ■SI 従来型:10兆4,946億円(2.9%減) クラウド型:6兆9,649億円(96.2%増)
クラウドを利用したDX実現のための新規システム/サービス開発の需要が増加
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(本社:東京都中央区日本橋 TEL:03-3241-3490 社長:田中 一志)は、オンプレミス環境からの社内システムのクラウド移行が進むとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた新規システム/サービス基盤としての活用が進むパブリッククラウドの国内市場を調査した。その結果を「2023 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー戦略編」にまとめた。
この調査では、「市場編」でSaaS、DaaS、PaaS、IaaSといったパブリッククラウド市場の現状を分析し将来を予想するとともに、「ベンダー戦略編」でクラウドベンダー50社の事業者の動向を整理した。
- ■調査結果の概要
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■パブリッククラウドの国内市場(リソース提供)
2022年度見込 2021年度比 2026年度予測 2021年度比 SaaS 1兆2,284億円 114.6% 1兆8,330億円 171.1% DaaS 420億円 109.1% 525億円 136.4% PaaS 4,221億円 138.3% 7,166億円 2.3倍 IaaS 6,272億円 125.5% 8,763億円 175.4% 合計 2兆3,197億円 121.1% 3兆4,784億円 181.6%
なお、社内システムのパブリッククラウド移行後の展開として、分散するデータの統合に取り組むケースが増えている。データドリブン経営(データを活用してビジネス上の意思決定を行う経営手法)の機運が高まっていることも後押ししており、DX実現に向けた新規システム/サービス基盤としてクラウド利用が進むとみられる。 -
■SaaS(業種汎用型/業種特化型)
業種汎用型は、情報分析/コラボレーション、CX/デジタルマーケティング、業務システムに分けられる。現状は情報分析/コラボレーションの規模が大きい。テレワークの普及に伴い、情報共有やコミュニケーションツールが変化していることから需要が増えており、今後も市場をけん引するとみられる。CX/デジタルマーケティングは、顧客データの活用によるマーケティング活動や、顧客満足度向上、顧客体験最適化といった取り組みを強化する企業が増えていることから伸びている。業務システムは、SaaS利用がやや遅れていたが、今後はビジネス環境や法改正による業務フローの変化に対応するアプリケーションの需要増加により、大きな伸びが期待される。
業務特化型は、製造業や流通業、サービス業を中心に導入が増えている。製造業は、FA分野では生産系データ管理の機密性を理由にオンプレミス環境が中心であったが、生産現場のデータや社内IT分野のデータ一元化を図り、新規ビジネス創出などに取り組む機運が高まっていることから、徐々に利用が増えている。流通業は、中堅/中小企業で人材不足への対応やコスト削減として、特にSaaSを利用して車両の走行データをクラウド上で収集するサービスの需要が増えている。また、サプライチェーンの最適化や物流業務の効率化を目的に物流倉庫管理システムの再構築を進める企業が増え、拠点間連携のため、クラウド型アプリケーションやクラウド基盤の採用が増えている。サービス業は、小規模な事業者が多いことや、宿泊施設などではサーバーを置くスペースを確保しにくいといった点から、導入が伸びている。 -
■DaaS
オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが増えていることから、環境を問わず共通の作業環境を実現できるDaaSの需要が増えている。また、ゼロトラストセキュリティの実現に向けた取り組みが進んでいることを背景に、DaaSは他のゼロトラスト関連プロダクトと比較して安価かつ短期間で導入でき、場所を問わず業務IT環境の統一ができることや端末にデータを保存しないといった利点から、需要が増えている。
中長期的には、業務上のデータやツールなどをクラウドに集約し、働く場所を選ばない作業環境を整備することにより企業のDX推進を後押しするデジタルワークプレイスの実現を目的とした導入で伸びるとみられる。 -
■PaaS
PaaSは、アプリケーションを稼働するためのプラットフォーム/ミドルウェアリソースを提供するサービスを対象とした。
アプリケーション開発/実行/連携とデータベース/データウェアハウスが中心である。PaaSを活用してアプリケーション開発を進めるケースが増えたことから、ユーザーが所有リソース内で大量のデータを分析することの限界や、IaaS上にライセンスを持ち込む際の制限やコスト課題などを背景に、データベースとしてのPaaS利用も進んでいる。社内システムの移行を終えたユーザーが、分散するデータ統合を目的にPaaSをデータウェアハウスとして利用することや、DX実現に向けた新規システム/サービス開発を目的としたアプリケーション開発/実行/連携としての利用が増えており、今後大幅な伸びが期待される。 -
■IaaS
IaaSは、サーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラリソースを提供するサービスを、ネットワークリソースは、コンテンツ配信ネットワークサービスやデータ転送サービスなどを対象とした。
現状、サーバーリソース用途が7割以上を占める。基幹系システムをはじめとした社内システムとしての利用が多い。加えて、DX実現に向けたビッグデータ分析用途やAI/機械学習用途などにおけるGPUサーバーリソース利用も増えている。ストレージリソース用途は、リモートワークが急増したことを受け、オンプレミス環境のファイルサーバーの移行先としての利用が増えている。また、事業継続性の重要性を背景としたDR(災害復旧)や、データ利活用によるビジネスモデル変革や新規事業創出などのDX推進を目的としたデータレイク用途なども伸びている。ネットワークリソース用途は、ネットワーク機器の運用負担軽減やコスト削減、セキュリティ向上、柔軟性向上などを目的とした仮想ネットワーク利用がけん引している。ハイブリッド/マルチクラウド環境の進展に伴うシステム間でのデータ転送/移行ニーズや、サービスのオンライン化進展に伴うコンテンツ配信ニーズの増加も市場拡大を後押ししている。 -
■IaaS/PaaS市場におけるDX関連システム基盤の国内市場
2022年度見込 2021年度比 2026年度予測 2021年度比 2,248億円 128.6% 3,409億円 195.0%
少子高齢化による労働力不足や、海外企業の異業種参入を背景とした国際競争力の低下などが、産業界の大きな課題とされる中、DX実現を経営上の重要課題として捉えて取り組みを進める企業が年々増えている。IaaS/PaaSを活用することにより、データ量の急激な変動にも対応可能な拡張性や、プラットフォームとしてデータ分析に優れた最新かつ豊富に備えられる利点があるため、導入が増えている。
特に、企業競争力やビジネスの創造、社会価値向上などを目的に社内外のさまざまなデータを活用したデータ駆動型ビジネスが推進されており、データの収集/蓄積を行い、データ分析や処理、AI活用などを行うため、DX関連システム基盤の中核であるデータ分析基盤やAI/機械学習サービスの利用が増加している。
現状、メガクラウドベンダーや外資系ベンダーなどが提供するサービスが中心である。それらのベンダーは、積極的な大型投資を行い、サービスラインアップの拡張や既存サービスの機能向上に取り組んでいる。一方、国内ベンダーは、投資規模の問題もあり、他社ベンダーのサービスを提案するなど柔軟な対応を進めている。 -
■SIの国内市場
2022年度見込 2021年度比 2026年度予測 2021年度比 従来型 10兆8,934億円 100.8% 10兆4,946億円 97.1% クラウド型 4兆3,676億円 123.1% 6兆9,649億円 196.2% 合計 15兆2,610億円 106.3% 17兆4,595億円 121.6%
クラウド型は、コスト削減や運用負担軽減を目的とした従来型システムからの移行、およびDX実現を目的とした新規システム/サービス開発に伴う利用拡大を背景に、好調な伸びが続くと予想される。オンプレミス環境からの社内システムのパブリッククラウド移行に伴い、特にIaaS/PaaS上でのシステム開発ニーズが高まるとみられる。
内容の詳細につきましては『市場編』、『ベンダー戦略編』をご覧ください。
- ■報道関係のお問い合わせは
- 富士キメラ総研広報担当 Tel. 03-3241-3473(窓口:富士経済グループ本社 広報部)